2019-05-23から1日間の記事一覧

Oh!透明事件! 〜『名探偵コナン 紺青の拳』を見たゾ〜

あらゆる要求にこたえるのはラクじゃない。原作マンガアニメシリーズ映画スピンオフと、今やコナンコンテンツは様々な層の歴史と愛着が折り重なったミルフィーユだから、万人を満足させようと思うとどうしても錯綜した内容にならざるを得ない。そんなわけで…

たかが真実 〜『アメリカン・アニマルズ』の集合と離散〜

映画『アメリカン・アニマルズ』は2004年にケンタッキー州で起こった実際の盗難事件を題材にしている。博物学の精華として知られるオーデュボンの画集「アメリカの鳥類」時価1200万ドルを盗み出そうとした犯人は、なんと将来を期待される四人の大学生たちだ…

眼刺しのラブレター ~『女王陛下のお気に入り』解体~

どきどきしていた。わくわくしていた。アメリカ版のティーザー動画が上がったのが去年暮れ。『The Favourite』=おきにいり。通常なら“Favorite”と綴るところ、意味深な“u”ひとつ。この綴り方はたしか、古式ゆかしきイギリス英語だ。高校の授業で聞いた記憶…

ヨルゴス・ランティモスと神話的リアリティの地平~作家論に代えて~

先の記事 (しらない恍惚を盗む人〜聖なる鹿殺し、ヨルゴス・ランティモス、神話的境界〜|脱輪 @waganugeru|note(ノート)https://note.mu/waganugeru/n/nb169ebf9568e) では、“神話的境界”というキーワードを軸に『聖なる鹿殺し』の分析を試みた。おさら…

しらない恍惚を盗む人〜聖なる鹿殺し、ヨルゴス・ランティモス、神話的境界〜

聖なる鹿殺し。前作『ロブスター』で未婚者が動物に変えられてしまう寓話世界を描き注目を集めたギリシア出身の監督ヨルゴス・ランティモスによる五つ目の長編作だ。主人公は高名な心臓外科医。眼科医の妻に娘と息子の二人の子供を持ち、庭付きの家で裕福な…

FINAL SPANK HAPPY 〜MINT EXOCIST TOUR〜 at 京都Metro

行ってきた。本当にふざけている。二人がインスタでスタジオライブ配信を行っていて、魂から解放された人間を目のあたりにすると人はこんなにも浄化されるのかーと魂消たものだが、画面を越さず駅をまたいで行ったライブは、ひとつのからだがふたつ並んでい…

pure evil! pure horror! 〜『ハロウィン』讃〜

ただただ強い、ただただ不死身、ただただ人殺し、そしてしゃべらない。一人の人間がただただに至るまでの過程原因情動すべてをすっ飛ばし、膨大な計算の果てに取り出された悪意の公式のみを呈示するシンプルさによって、ジョン・カーペンターの『ハロウィン…

脱輪が選ぶロック名盤100

1 ガセネタ/Sooner or Laterやはりここからはじめなければならない。はじめたとたんにおわってる。ロックは誕生後10年で可能性のすべてを爆発させ、以降はその長い長い余波が続いているだけ、というテーゼが高速のやけくそで垂れ流される。 2 サカナクショ…

触れられる火は消えた光 〜『鬼火』を見て〜

達成感なんているかそんなもの俺は死んだら完成なんだーーSyrup16g『実弾 Nothing's gonna syrup us now』当たり前のことを研究するのはちっとも当たり前ではない。カナダの西洋古典学者ピーター・トゥーヒーの『退屈 息もつかせぬその歴史』(青土社,2011)は…

人間がほどけてゆく記録 〜『マックイーン:モードの反逆児』に寄せて〜

だいたいほとんどの人は服を着たり脱いだりする。不思議だ。服が人間を着たり脱いだりしてるのではないか、と思うこともある。外に出る、というのは大変な冒険で、裸のままでは出られない。体に服を着せ、心に感情を纏って、行く。行ったら帰ってくるのがふ…