彼女日記1

・某日
おおきなものが蛇口と間違えてわたしをまわす。苦しくなって水を飲む。上から飲んでも下から読んでも水道水。わたしは溢れてとまらなくなった。



・某日
今日は一日、「自分とどこまで抱き合えるか」というテーマに取り組んでいた。
まず手を繋ぐ。社会的なキスともいえる握手ではなく、指と指を絡める“恋人繋ぎ”の方。足の間の股と同じように、指の間の股には性感帯があると聞く。ためしに撫でてみるが、なんともない。ハードなのが好みなのだろうか。そう思い、つねってみたら、痛かった。



・某日
二日目。足の裏を合わせてみた。ざらざらしている。踏みしめたコンクリートに、踏みしめる足が似るのだろうか。



・某日
昨日まで秋だったが、今日から冬。寒いのはつらい。来年に備え、飛び越えようとする秋をヨーイ、ドンのまま捕獲する機を買う。



・某日
バッドブレインズというバンドのCDを聴く。ハードコアパンクとダブレゲエが交互に演奏される。なるほど、頭悪いズ。正直なのはいいことだ。



・某日
彼女と熱川バナナワニ園でデートした。ワニって熱帯の生き物なのにかわいそうね、と言うのでバナナだってそうだよ、と答えると、あらおそろいね!にっこり。こないだね、あんまりさみしかったから一人で手を繋いだんだ。あら、さみしい時はあたしだってそうするわ。おそろいかい?おそろいよ!
みすぼらしい服を着たわたしの言葉を裸にし、うっとりする匂いの夢をかぶせてくれる彼女の言葉。



・某日
「好きな女の子」という表現は重複ではないか。頭痛が痛い。犯罪を犯す。好きな女の子。重複ではない、おそろいなのだ。そう気付いたら涙が出た。やはり彼女は天才だ。
おそろい、おそろい、と口に乗せてみる。



・某日
ブックオフのアダルトコーナーで叩き売られていた映画『トコジョーズ』を見る。
アメリカのハイスクールのプールに迷いこんだ鮫が水着ギャルの処女膜を破りまくるという内容。経血に染まるプールの色彩美が見所と言えば見所だが、いずれにせよくだらない。鮫を解き放ったのがクラス中の女子にいじめられている“ファットボブ”だったというオチも暗い。ラストはボブが食いちぎられて童貞卒業。とにかく救いがなく、笑えない。