彼女日記2

・某日
わたしはおかしいのかもしれない。彼女をときどき、とんでもなくひどい目に合わせたくなる。
もし目の前で他の男に犯されても、好きなままでいられるだろうか。
考える。



・某日
ひさしぶりに映画を見た。『米屋の歴史』というドキュメンタリー。
「人類開闢以来数千年、遠大な歴史のどの時点において米屋は餅を売るようになったのか。見る者は残酷な真実の証言者となる!」
まじめな映画だったので疲れた。明日からパンに変えよう。



・某日
N遊園地に、足の指数え魔が出没しているそうだ。女性を仰向けに寝かせ、右足の小指から左足の小指に向かっていっぽーん、にーほーん、と声に出して数えていく。10本揃っていることを確認すると、涙を流して去っていくらしい。
情報番組でやっていた対策グッズ(黒ぶちにバターを塗ったキリン)をメモ。



・某日
美術の館<体育の館<水族の館
「の」を付けるとこわい順
つぶれた暇をふくらましたので、明日公園で配ろう。



・某日
朝から便秘気味。パンは消化に悪いのだろうか。しかし『米屋の歴史』を見てしまった今、米食に戻ろうとは思わない。



・某日
むしゃくしゃして、プレイステーションで『THE 米騒動』をプレイする。富山の主婦になって全国の米屋を破壊していくゲーム。レベルが上がるごとに武器が強力になるのは楽しいが、アジテーションがなかなか難しい。全学連風のアジは主婦の心に響かないらしく、タカタ社長を参考にしたら上手くいった。



・某日
今年のクリスマスは遠ざかっていくらしい。クリスマスは近づいてくるものと思い込んでいたが、そんな年もあるのか。これについて、ユング派の心理学者のコメント。
「世界中のサンタを兵糧攻めにすれば、クリスマスのおなかとせなかがくっつき、任意の期日にかち合うはずだ。人道上の問題?簡単なことだ。キリスト教徒のサンタには、持たざる者は幸いである、と説教してやるだけでいい。イスラム教徒のサンタに関しては、ラマダンにタイミングを合わせる。仏教徒?尊公も即身仏になれる、とでも言っておけ(笑)」



・某日
フラミンゴにLIZ LISAのワンピースを着せてみたい。



・某日
彼女をたまらなくひどい目に合わせたくなる心理は事実だが、彼女にたまらなく恋い焦がれる言葉も真実だ。
そのことの証明になるかはわからないが、書いておく。わたしがおそろいという言葉を聞いてまっさきに思い浮かべたのは、並んでバスタブに揺れる死体だった。