おやすみの前におやすみ。おにいちゃんにおやすみと言う。おにいちゃんがおやすみと返す。ドアノブを回して部屋に入る。木製のネームプレートがカランと鳴る。プレートにはMAKI'S ROOMとあるので、おにいちゃんはああ今日もMAKIがいるなと思う。だけどノック…
イメージは千々に乱れて飛んでいた。そいつらの尻尾を捕まえてひとところに集めるのに精一杯で、ポロックは女にかまっている暇がなかった。心の砂楼に幾層にも積み重なったあれやこれやの観念を一枚ずつ引き剥がす作業は、現実世界に還元された暁には「優雅…
間違い探しと聞くと左右の絵を見比べるアレを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、僕がここで問題にしたいのは笑っちゃうぐらい悲劇的なヤツ、デートの幕切れ相手を見送った途上あうあーと頭を抱えてやってしまうアレのことなのです。曰くあの表情、なに…
・昨日の自分が今日の自分と同じはずないのに、今日の自分は昨日も自分であったことを疑わず、周りもそのように扱うのは不思議なことだ。胞子のような僕なのか。風に飛ばされる夢のなか。昨日の僕は寝てる間に無数の種を飛ばし、夜の暗さに打ち勝ったものだ…
季節は熱いトタン屋根の上。だらしない猫に挨拶する帰り道。今でも君を、この曲が好き、あの人が嫌い、という許し方を、その身振りの始まりから終わりまで。シャンソンはフランス語で歌という意味で、その歌はなんでもないすべてを指す。そう教えてくれたの…
前回のクソみたいな分析(風立ちぬ1 - http://dainasigenius.hatenablog.com/entry/2013/09/05/051301)は捨て去ってください。宇野常寛の解釈を批判的に継承しつつ、ほらね、批評なんてくだらないでしょ?ということをこそ僕は示したつもりだったのですが…
風立ちぬ見てきました。ジブリ作品で初めていいなあ~と思いました。以下にも書いたとおり、この映画を批評することにはまったく意味がありません。だから僕は風立ちぬをだしにして物語を書きはじめたのですが、そっちがちょっととんでもないことになってき…
女の子と見たい映画女の子と聴きたい音楽女の子と行きたい場所が増えれば増えるほど、女の子は剥がれ落ちていく。「あれに魂なぞない。獣だ。翼を失い、四肢をもがれ、落魄してなお吠える全霊の獣。覚えておくといい。もし腕を噛まれたら…」かつてわたしは一…
先日、フリーマーケットをぶらついておりましたら、『栄光のグループサウンズ特集』なるCDを発見しまして、こいつあいただきとばかり手に取りましたらば、出店主のおじさまいわく、「あーそれね、本人歌唱じゃないんですよ」はあ?本人じゃないって、本人…
女の子のおえっとなる顔が見たい。男なら誰もが抱くそんな欲望を叶えてくれるバーがあるという。バーは北陸S大学内の地下食堂だ。普段はなんの変てつもない食堂だが、営業終了の3時間後、再び明かりが灯る。会が始まると黒服のウェイターが女の子の前にプレ…
君はなにしてる?僕は寝転がってボ・ガンボスのライブ盤を聴いてる。それで、よせばいいのに幸せってなんだろう?とか考えてる。幸せは反語的に発見されるものじゃないか、ってさっき気付いた。ああごめん、結論だけ先に持ってくるのは悪い癖だよね。でもさ…
・それなんてえろげ?上方落語の古典に“野晒し”という演目がある。ある男が墓参りに行った先で野晒しになったままのしゃれこうべを見つける。その様子を気の毒に思った彼、長年の風雨に苛まれた汚れを洗い落とし、すっかり綺麗にした後供養してやった。する…
きれいな夜だね ためらいが溶け出すみたいに よそみしないでね ふたつある目を ふたつとも 煙が好きなの?そうでもない、と答えたけれど ここらはぼやが出るから 生きものには扱えない夜だってあるね 区切られてしまったね 置きざられた僕ら 花を数えている…
からだがあってよかった、とあなたは言った。どうして、と彼女は尋ねる。どうしてかわからない。そこでこんな話をした。「男と女はもともとひとつだったんだ。そこに神様が雷を落とした。引き裂かれたからだは男と女に別れて、失われた半身を探してるってわ…
自己のツイッターから盗用して日記を書くという不埒なこころみ。TSUTAYAでパッケージ化され、雑然たる笑みを浮かべるAV女優のことごとくが自分の彼女よりかわいい時代にあって、いったいなにを男子一生の目的として生きていくか?ということが今後ますます大…
拾ったんは偶然やない。きみがあんまりかわいかったせいや。だって生きとるか死んどるかも分からんねやもん。美しいに決まっとる。そんで右耳からふこーって息吹き込んだら左耳ぽーっ言いよんねんな。もうぼくたまらんくなって浜辺に頭打ち付けて笑たわ。よ…
大好きな人と一生を添い遂げたいと願うのは恋する人間の常ですが、悲しいかな、出会いには別れがつきものです。いわば私達は出会った瞬間から別れはじめているわけで、別離はたがいを繋ぐ磁力が強ければ強いほど、苦い味をもたらすでしょう。あらゆる誕生は…
・某日君と普通の話ができたらどんなにいいだろう。ゆっくり腰かけて、どこにも寄りかからず、ためらいさえも泡立つような、そんな時間を過ごせたらどんなにか素敵だろう。君に話しかけようとする時、喉の奥に決まってなにかがつかえる。それは言葉なのだろ…
一人で寝たのにだれかと寝た気になって起きたら朝、そのだれかはいない安心のぶん、一人が悲しくなる。 寝ぼけながらそんなことを言って最初から一人だったのにね、と付け足す。ふわ〜あ。スポンジが開くような伸び。 朝。昨日の続きである、という事実がい…
水が流れる音がする。今年定年を迎える父のトイレは長い。うむ、むーん。いきむ声が時折聞こえる。あたしを生んだ時もあんなふうにいきんだのだろうか。「お父さんさ」「うん?」タオルで手を拭きつつ、振り向く父。顔が赤い。今日は会社で飲み会があったそ…
悲しみ、または墓穴と覗き窓、あらゆるさかいめのあやふや、散歩する山高帽、透き通った孤独の反射板、こわごわすすむ真夜中はランチ、値段のかわりにその価値を知っていた唯一の本。アコーディオンの蛇腹は震えるダックスフント、またはあくびする猫。冷た…
昔々あるところにうっとりちゃんとエクスタシーくんという兄妹がいました。二人はなかよくベッドの上で生まれたのですが、いつもケンカばかりしていました。それというのも、うっとりちゃんが広がろうとすると、エクスタシーくんは縮もうとするからです。あ…
ズバリお答えしましょう。【ぼくたちの失敗、または、恋が立ち止まる理由】恋人ってだれ?それはかならず他人で、つまり“もう一人の自分”で、その中でも特に“自分に近しく感じられる他人”であるはずだ。他人のことはわからないが、もう一人の自分なら推測は…
【おねしょ、または、台なしの美学】おこられちゃうおこられちゃう、ダメ!ダメ!積み上げた緊張のジェンガが一気に崩れる、やっちゃったーのあの瞬間は、実はやったーなのでもあって、たまらなく気持ちいい。おねしょはだれもが人生ではじめて経験する失敗…