脱輪が選ぶロック名盤100

1 ガセネタ/Sooner or Later
やはりここからはじめなければならない。はじめたとたんにおわってる。ロックは誕生後10年で可能性のすべてを爆発させ、以降はその長い長い余波が続いているだけ、というテーゼが高速のやけくそで垂れ流される。

2 サカナクション/シンシロ
どういう意味なのか知らない。真摯にロック、だとしても僕は笑えない。デビュー前から泣いてたサカナクションはシャツの袖で涙を拭いても泣きまくってるのは、社会の病みじゃなく個人のエモーション。円谷幸吉的スポ根美学の結晶。

3 西岡たかし/満員の木
日本のロックが英米の翻訳だとして翻訳の過程で立ち現れる割り切れなさにこそ独自性が発見されるという観点から、西岡たかしの評価はあまりに低すぎる。関西フォークに隠された狂気がどろどろ。「終わりの季節」の彼岸っぷりはどうだ?

4 Sex Pistols/Great Rockn’roll Swindle
いやいや映像作品やないかい!その通りDVD。今の若者に音源聴かせたって衝撃でもなんでもない。ピストルズこそが真のファッションパンクであり、こいつはなかなかオシャレな逸品。

5 andymori/ファンファーレと熱狂
いい曲を作ったいいバンドだけど、僕にとってはこの一枚だけ。冒頭、ホーンを迎えた静かな盛り上がりから、皮肉とノスタルジアがチャリこいでプールいく速さで駆け抜ける。ジャーン!でどの曲も終わる潔さ。

6 クリープハイプ/死ぬまで一生愛されてると思ってたよ
ジャーン!どころかドンッ!でほとんどの曲が終わっていた頃のクリープハイプ。喉奥の開示はエロティックな戦慄の象徴で、フェラの歌をフェラより大きく口開けて歌う尾崎はいっぺんフロイトに診てもらえ!

7 Suicide/Suicide
7番目やし縁起いいやつ...ってそれ本気で言うてるう!?リズムボックスとシンセと声だけで向こう側に行ってしまった二人はピストルズの1000倍パンク。2ndのスウィートさも捨てがたいが、結局はこの寒気に帰ってくる。

8 戸張大輔/ギター
これさえあればなにもいらないという時期がありました。今だってそうです。こわいから、まっしろになるから。

9 戸張大輔/ドラム
うそつきました。時にはこれも入り用です。『ギター』から10年後に発表された本作は、もうちょっとまとも、繊細で、冴えるんだ。あたまが。体は冷えていく。

10 エレファントカシマシ/俺の道
俺の道なのである。誰にも邪魔させないのである。女子供はすっこんでろ!なのである。ところがどっこい、「相当本気で生きてる」女なる生き物からさえ、歯を食いしばって学ばんとする「勉強オレ」にすべてが詰まっている。

11 Led ZeppelinLed Zeppelin
水平運動としてのブルースに垂直運動のダイナミズムを加えたものがロックであることの完璧な証明。掘削機のようなドラム、たなびきつつ降下するギター、天に上っていくもクールに身をかわすボーカル。

12 Mount Kimbie/Love What Survives
マウント・キンビーの来日公演に行った。気持ちよすぎて脳味噌爆発して全身バラバラに弾け飛んだ。飛んでたっておかしくない。ザラつき、ヒリつき、病みつきになる音が真顔で配置される狂気。

13 KOHH/DIRT Ⅱ
自己及び他者、その総体としての世界に対する破壊衝動。ロックの主要テーマのひとつだが、「タトゥー入れたい」リミックスにおけるあまりにピュアかつあっけらかんとした破壊衝動は他に類を見ないのではないか?

14 タコ/セカンド
あまりに語ることがありすぎるファーストとは対照的にあまり語られることのないセカンド。でも好きなんだなー。ライブ盤ということもあって、80年代アンダーグラウンドの生々しい空気が伝わってくる。草葉の陰から...

15 T-REX/Slider
『電気の武者』と甲乙つけがたいが、とりあえずはこの異様な高揚感の方を取る。グラムロックうんぬんは本質ではなく、エレクトリック・ブギはロック化したブルースの最も純粋な形式なのだ。

16 T-REX/Dandy in the Underworld
コアなファン以外からは見向きもされていないであろう遺作。実は一番好き。絶頂期のエネルギーが枯れても、「Crimson Moon」のえろさ、キュートさは口ずさみたくなる。

17 キリンジ/ペーパードライバーズミュージック
浮気相手の家から帰る朝、電車のホームでよく歌った。
「ああ 口づけで攻めてみても 蛙の面にシャンパンか 舌を噛むなんてひどいな ご挨拶じゃないか」

18 Bob Marley & The Wailers/Catch A Fire
レゲエと呼ぶにはあまりにロックなメジャー1st。楽曲の多彩さでは『EXODUS』に一歩譲るが、ジャケ写通りのいなたさ(マリファナ吸ってるボブのアップ)に惹かれる。

19 The Beach Boys/Pet Sounds
キョービの若いもんはビーチボーイズゆうたらペットサウンズしか聴いとらん、言われようがさすがにこれは外せない。神に捧げるティーンエイジ・シンフォニーを目指した引きこもりたちの桃源郷

20 フジファブリックフジファブリック
リアルタイムでこの1stの衝撃はでかかった。「TAIFU」の躁病的シンセワークはその後様々なバンドに継承されるも、「追ってけ追ってけ」「サボテンレコード」にほの見えた未知の可能性はいまだ手つかず。

21 Television/Marquee
Moon
空前絶後超絶怒涛のピンライブを収めた2枚組『Blow Up!』も必聴ながら、やはりこのクールさに、細面さに意義がある。妖しく絡み合うツインギターが急降下したかと思えば天上へ舞い上がるスリル。

22 Frank Zappa/Uncle Meat
絵や写真をコラージュすることと音をコラージュすることはどれほど似ているのだろう?目につけ、耳につけ、コラージュとは歴史をひっかき回す暴挙にほかならない。ポルノチックに元気なイタズラ。

23 Aunt Sally/Aunt Sally
Phew戸川純椎名林檎鳥居みゆきという順にトンでる女性アーティストの系譜を辿れる。実はポップな曲が多いのも特徴だが、なんといっても1曲目のざわざわ感に尽きる。bikkeのギターにも注目。

24 Faust/So Far
雨降りだよサンシャインガール、なんて優しく囁いたかと思えば、バナナ持ってきておとうさん!明日は日曜日だよ!絶叫。新聞記事を切り抜いて作る誘拐状が実際的なのかふざけているのかという命題に対する永遠の問い(あるいは答え)

25 The DoorsThe Doors
いる?サマーオブラブとかドラッグムーブメントとかヒッピーの話?例えばそれより重要なのは、なぜヴァイル/ブレヒトの『三文オペラ』内の楽曲「Alabama Song」がカバーされているのか、といった視点。

26 The Doors/Strange Days
嗚呼!フェリーニ映画のワンシーンのようなこのジャケット!アッパー系の1stに対してダウナー系の2ndと解するはまだまだ素人、適度に土の落ちたブルース/カントリーが白昼夢的悲哀を滴らせる。

27 宮村優子大四喜
大名盤!平沢進戸川純、破矢ジンタら豪華作家陣の尽力は無視できないにしろ、最も脅威なのは個性豊かな楽曲群を憑依的に歌い分ける宮村優子その人!声優としてのパーソナリティが運良く転んだ稀な例。正当な評価を望む。

28 平沢進/AURORA
ヒラサワで一番好きなアルバム。残念ながらアンビエント路線はこの1作きりに終わってしまったが、たゆたう電子音と慈しむような歌唱が作り出すリゾート感は唯一無二。不穏さたなびく「呼んでるベル」で終わるのもグッド。

29 The Pop Group/Y
ストパンクとダブエンジニアリングの初めてにして最も危険な出会いにアナーキックな政治性が仲介として選ばれた事実はいつまでも記憶されるべきだろう。

30 川本真琴川本真琴
再生するたび生身の女の子が蘇る。その子の顔や性格、香りや手触り、好きな服から悩みごとまでつかめる気がする。そんなアルバム、他にない。
「D.N.A」は個人的J-POP史上最高の歌詞。だいっきらいなのにあいしてる。

31 Talking HeadsTalking Heads’77
『Remain In Light』におけるアフロビートの痙攣的導入はたしかに魅力的だが、なんてったってこのファーストアルバムは楽しすぎる!難解なバンドイメージを覆すスッキリ盤。

32 Talking Heads/Stop Making Sense
ロックバンドのライブを生のまま捉えた映像作品。なのに、恥ずかしいほど現代アート、おじけづくぐらいクール。冒頭ラジカセ1台を伴って登場するデヴィッド・バーンのかっこよさといったら!

33 ジャックス/ジャックスの世界
同じサヨク的な思想の土壌があるにしても、おしゃべり頭のロックが白人インテリの韜晦だとすれば、ジャックスのそれは煮えたぎる暗黒の情念。とはいえ、早川の情に木田の理が加算されているところも見逃せないポイント。

34 D.A.N/D.A.N
ABCDEFG〜♪CANの次だからDANなのかと思った。あながち間違いでもなく、CANという地震はP.I.LからPortis Headを伝ってD.A.Nを揺さぶったはずなのだが、んなこたどうでもよくなる国産清涼剤。

35 Kraftwerk/Man Machine
あの夏わたしたちは真っ暗な部屋の中で冷たく死んでいた...みたいな書き出しから始まる岡崎京子クラフトワーク論をいまだに思い出す。無機質で、皮肉たっぷりで、ちょっと堅物、それでも優雅な発電所

36 Kraftwerk/Minimum Maximum
一見ロックの対極に位置する現代音楽はロックの密かな栄養源だが、もろ現代音楽上がりのクラフトワークが作り出したのは冷たい別種の官能=テクノだった。その中にあって、最もロック的なライブ盤。

37 10cc/The Original Sound Track
んもうジャケからしてサイコーな架空のサントラ。小気味いいロックンロールと抜群のポップセンス、偏執的とも言える実験精神が見事に融合!「I’m Not in Love」は夢心地の名曲。

38 The Rabbits/Winter Songs
君が知らないだけで狂ってる音楽なんて世の中にいくらでもあるんだけど隅々まで狂い尽くしたロックンロールはたったこれだけ。5万字のラビッツ論を書いて消した。

39 宮沢正一/人中間
これもいいよな〜。ひとりぼっちエレキギター轟音ノイズ弾き語り。心の友よ〜。

40 Ogre You Asshole/homely
英語のhomelyには親しみある、の他に悲惨な、という意味もあって。震災後に流行った集合的無意識をテーマとした作品の中で頭一つ抜けてた。完璧な構成、「フェンスのある家」が狂おしいほど好き。

41 あぶらだこあぶらだこ(青盤)
ドラムに吉田達也を迎えた2nd。あぶらだこのアルバムは全部イカすが、こいつは別格の気持ちよさ。買っても聴いてもハマらなかったのが、突然ピタッとハマる瞬間があり、手に負えない。おしっこチビるかと思った。

42 The Clash/London Calling
とにかくポップで多彩、それでいて真摯な熱がある。ジャケット含め、イカつくもオシャレなところが他のアルバムとの相違か。あっあっあーうと吠えたくなる冒頭からノリノリでベイベーなキャデラックまで。

43 The Only Ones/The Only Ones
デビューこそ遅れたもののパンクムーブメント勃発時には既にベテランだったせいか、性急なロマンチシズムとくたびれた大人の色気が同居しており、胸を締めつけられる。ひねりの効いた曲展開も○

44 Gang Of Four/Entertainment
ノコギリギターと呼ばれたアンディ・ギルの男気溢れるプレイも印象的だが、なによりバンド全体のアンサンブルが素晴らしすぎる。気持ちいいところに気持ちいい音がビシバシ来る無駄のなさ、自在の緩急。

45 Joy Division/Unknown Pleasures
前身のWarsawがありふれたパンクバンドだった事実は、プロデューサーのマーティン・ハネットの天才を示すのか、やがてニューオーダーになる彼らの潜在的資質を表すのか...永遠の耽美派

46 吉野大作とプロスティテュート/死ぬまで踊りつづけて
ニューヨーク・ノーウェイヴの影響を最も上手く消化したのは、フリクションを除けば彼らではないか?金属的なギター、悲鳴を上げるサックスを支えるリズム隊も渋いが、なによりボーカルが激シブ。

47 The Flying Lizards/Music Factory
アートスクール出身者の批評性とインテリジェンスがロックの形式を借りてわたパチみたいに弾ける。金がなくても楽器ができなくてもアイデア次第でおもしろいものが作れることの偉大な証明。

48 七尾旅人/ヘヴンリィ・パンク・アダージョ
根っから過剰の人である。ただしその過剰を放出するやり方が毎回さまざまなので、正直ピンとこない、好きになれない盤も多い。そんな中、エレクトロニカ的音像で統一されたこの二枚組大作には圧倒される。

49 The Back Horn/人間プログラム
高校の時よく聴いたなあ。ほんっっっとによく聴いた。「天国に空席はない」と歌われる『幾千光年の孤独』から始まり、『サニー』『8月の秘密』『ひょうひょうと』『空、星、海の夜』。名曲がぎっしり。

50 じゃがたら/南蛮渡来
あんた気に食わない!てけてけてけてけって

51 The Bird And The Bee/Ray Guns Are Not Just The Future
ヒップホップ通過後のキックの裏でシンセが霧状レイヤーを作り出し、夢心地ボーカルとエレクトロニカアレンジが室内楽風の彩りを添える。完璧!

52 Neu!Neu!
ノイってのはドイツ語のニュー、要は新しいって意味なんだけど、向こうの洗剤パッケージに載ってた売り文句をそのまま拝借したらしいんだよね、ところがそんな諧謔が成立しなくなるぐらい、実際新しいんだよね。ただのエイトビートなのに!

53 Washed Out/Mister Mellow
サンプリングを巡る問題圏は未来からのサンプリングが不可能であるという当たり前の事実に存している。過去は過去であるだけでせつない。せつない過去と遊びたわむれながら過ごす夏。

54 香奈/機械的人間
打ちこみドラムのセンスのなさはかばいようがないけれど、喉にテンションをかけて絞り出すようなボーカルは唯一無二。上手い下手は関係なくオリジナリティーに賭けるのがロックだとすれば、香奈は最高のロックボーカリストだろう。

55 Richard Hell & The Voidoids/Blank Generation
髪を逆立てるパンクヘアーのモデルとなった男リチャード・ヘル。ロバート・クインのぶっ壊れたギターをお伴に、甲高いへろへろボイスが撒き散らされる快感たるや!

56 BECK/Midnite Vultures
いわゆるローファイはブルースの歴史的録音におけるざらつきを贋作したものだったと解釈できるが、僕が好きなBECKはローファイではなく断然本作のBECK。そわそわしちゃうほど楽しい詐欺師ファンク。

57 Syrup16g/HELL-SEE
シングルを作るためのわずかな期間に制作された15曲入1500円のアルバム。というエピソードが示すとおり、この頃バンドは絶頂期にあった。贅肉を落とし骨格だけになった楽曲群、皮肉と正論が互いを見失う歌詞。

58 Syrup16g/Delayed
オルタナ譲りの攻撃性と80~90年代のインディーロックの甘美さを同時にとことんまで突き詰めたバンドはいそうでいなかったし、今もいない。美しくもベタ甘、白昼堂々サイケデリックなこどものくに。

59 坂本龍一千のナイフ
「一緒に死んでください」と書かれたライナーノーツが過大な自意識を背負った青年坂本の姿を伝えるデビューアルバム。自身の血肉となっているアカデミックな音楽理論をシンセの合成音とエキゾチシズムによって解体せんとする不敵ぶり。

60 坂本龍一/B-2 Unit
エル・リシツキーの構成主義絵画をパロったジャケが見事ハマった実験作。エンジニアにUKダブの大御所デニス・ボーヴェルを迎えた「Riot in Lagos」では、カット&ペーストとエフェクトにより凶暴な音が跳ね回る。

61 ULRICH SCHNAUSS/NO FURTHER AHEAD THAN TODAY
タンジェリン・ドリームの焼き直しかと思いきや当のタンジェリン・ドリームに正式加入してしまう事後承諾感含め、エレクトロとニューエイジの境界はいずこにありや?

62 志人/HEAVEN'S 恋文
歌詞作りにおいて、私小説的な内面暴露と物語的な世界構築は真逆の手法であるようだが、実は互いを利用し合っていることが多い。ロックの中のロキノン的自意識をとことんまで煮詰めた場合、両者の区別はつかない。

63 たま/汽車には誰も乗っていない
夕暮れにじわじわ揺れている安心のなさ

64 筋肉少女帯レティクル座妄想
うーん、つまり物語というのはよくできた疑似餌、なんでもくっついちゃう吸盤みたいなものでね、オーケンの妄想する世界にはどんな音楽でもくっついちゃうんだ。え、なに?今の多様化したアイドルグループの姿に似てるって?

65 Massive Attack/Mezzanine
CANの反復リズムに地を這う低音を加えたP.I.LをMassive Attackはヒップホップ通過後の暗さと黒さでアレンジ。昨今主流のダウンテンポなダンスミュージックに与えた影響は大きい。

66 さよならポニーテール/魔法のメロディ
ラフなポップスと見せかけて実に用意周到な…つまり青春の拙さを拙くなく上手に表現しているのだが、そんなフェイクがいやらしいなんてだれにも言わせない完成度。タイトル通り魔法がかかった1枚。

67 さよならポニーテール/なんだかキミが恋しくて
前作までの曲作りを担当していたふっくんなる人物、ひょっとしてメレンゲのクボケンジの変名では?と疑っていたのだが、声声声、女の子たちのカサついた声にメンソレータムを塗ってあげたくなる。

68 V.A/なまこじょしこをせえ
東京、京都、岩手を股にかけたら股ずれ、ズルズルベッタリ移動しながら生息したアメーバは第五列。実りゆたかな関節外しが川の流れのようにゆるやかに。

69 GESO・倉地久美夫/死語を愛して
だれがなんと言おうと国産最高峰のポップスであることに間違いはない。間違いはないが合ってる気もしない。1と1が対立する2から永遠に漏れ続ける言葉。

70 田村晴樹/奇妙な事実
音楽とか芸術とか、そういうことじゃなくってさあ!とにかくもう、ぜんぶがこのなかにあるじゃないかあ!

71 Moment Joon/https://youtu.be/GLew6DI6U9c 
あーあ、とうとうURL貼っちゃった!or このURLをアルバムタイトルと看做してなぜいけないのか?大阪の韓国人ラッパーMomentのライブ映像。愛も政治も引き受ける身体。

72 Miles Davis/On The Corner
ジャズの帝王にして嫉妬の天才マイルスがロックとファンクへの愛憎をぶちこんだ快作。キチキチと正確にリズムを刻むドラムの上で繰り広げられる即興、その抑制された熱気はテクノになぞらえることも可能。

73 Miles Davis/Get Up With It
エリントンに捧げられた大曲「He Loved Him Madly」(素晴らしいタイトル!)における混沌は初期電子音楽に通じる瞑想感をもたらすも強靭な意志が絶えず奥底から湧き上がってくる。

74 Can/Soundtracks
60年代、英米からドイツに伝来したロックをジャズと現代音楽のプレーヤーが解釈した結果、世界最高のロックバンドが誕生した。このねじれこそ文化のダイナミズムではないか?「Mother Sky」を聴かずして死ねない。

75 Can/Ege Bamiyage
急に始まる冒頭から一気に生楽器のセッションに放り込まれる気持ちよさ、正体なさに身を委ねる快感は『On The Corner』におけるテオ・マセロマジックに通じ、してみるとドラミングにも共通点が!?

76 Can/Future Days
水音をサンプリングしたアンビエントな立ち上がりからして、今聴いても震えるほど素晴らしい音像と質感。エンジニアリングはホルガー・シューカイだと思われるが、いったいどうやってこれを録ったのか?

77 Can/Tago Mago
たぶんCanのアルバムは全部持ってるし、一般的にはこれが代表作に挙げられることが多いのだが、わからない。こわすぎてあまり聴かない。ダモ鈴木による日本語が不意打ちで無意識を遮る瞬間の恐怖を想像できるだろうか?

78 The Monochrome Set/volume, contrast, brilliance…
近所に住んでるやさしいおにいさん…カッターはおなかに同心円を幾つも刻んで、レコードの溝みたい、おにいさんはニコニコしながら音を聞いてたんだって!

79 Friction/軋轢
スリーピースのロックバンドは信用できる都市伝説はフリクションから生まれたような。徹底してソリッドな音のぶつかり合いからニューウェーブ的ユーモアがふと顔を覗かせるあたり、ブランキージェットシティーの先祖か。

80 グンジョーガクレヨン/グンジョーガクレヨン
ロックでもない、ジャズでもない、フリーフォームな~という耳タコを真に体現し得た存在。ジャンル分け以前に、強いのか弱いのか、速いのか遅いのかすらわからない。例えていうなら、疾走する能。

81 Underworld/A Hundred Days Off
カフェで本読む時イヤホンから流すのに最適な音楽はなにか問題、今んとこ暫定の答えがこれ。ロックバンドがテクノやるようになったという出自が関係してそうな、独特の集中できる音。

82 LCD Soundsystem/Sound Of Silver
アンダーワールドとは反対に、テクノ的なアプローチによるパンクロック。ローファイなんて言葉じゃ許されないスカスカ加減を際立たせる曲の良さ、ラストに見せるろくでなしの感傷、心憎し。

83 Aphex Twin/26 mixes for cash
もうここまで来ちゃったらこれ入れていいよね?他アーティスト曲のリミックス集なのに知るかボケ俺様に依頼するのが悪いとばかりめっためったのぎったぎた。ボウイ/ヒーローズのリミックスが最高。

84 The Residents/Ikky Flicks
レジデンツの主要な映像作品をたっぷり詰め込んだDVD。とにかく今見ても斬新なアイデアの宝庫!全映像クリエイター必携&世界中のMVの元ネタ発見の契機ともなる、すこぶるつきの逸品。

85 The Residents/Eskimo
皮肉たっぷりながらポップかくあるべしな名盤『Commercial Album』はイッキーフリックスのサントラ代わりに必聴。エスキモーの生活を再現した本作のアンビエントなアホらしさも忘れがたく不気味。

86 James Blake/James Blake
イケイケEDMプロデューサーのソロ1stは祈りにも似た静けさのなかソウルフルな歌にオートチューンをまぶし…その真逆かつ斬新なスタイルは全世界の度肝を抜き、現在のムードを大幅に更新。死ぬほど好き♡

87 The Ronettes/The Best Of The Ronettes
ウォールオブサウンドってもピンとこないかもだが甘ったるい歌声とメロディーをリヴァーブで位相転換することによって生まれる夢心地のお風呂感はあらゆるドリームポップの源流。

88 大滝詠一Long Vacation
というわけで本邦随一のフィル・スペクターフリークが作り上げたシティポップ名盤。シルヴィ・ヴァルタンのアレをアレした「君は天然色」を始めとして、ポップである病気に憑かれた職人的名曲が脳内風街にそびえ立つ。

89 My Bloody ValentineLoveless
天文学的に膨れ上がっていく制作費用のかさみから所属クリエイションを破産に追いこんだインディーロック名盤とて、スペクターサウンドの広大な射程の範疇にあるが、呪縛は新たに更新され……

90 The Jesus And The Mary Chain/Psycho Candy
スペクター流儀のキャンディポップをパンク通過後の暴力的やるせなさで調理、というように、タイトルが音楽性をパラフレーズするスタイリッシュさこそ憧れられた?

91 The Stone RosesThe Stone Roses
憧れられたい、といえばこの1曲目。マッドチェスターとかダンスロックとか抜きに、このダサさ=一人称“僕”のセンチメンタリズムは、圧倒的に男社会であるロックの抜きがたい病理かつ魅力。

92 The Yellow Monkey/8
一般的な代表作は3枚目か6枚目ということになろうが、思い入れのある1枚。塾に通うバスの中CDウォークマンに入れて毎日聴いてたこいつ、ちょい貸してーや!片耳友が奪い、沈黙に包まれる車内……中学二年生。

93 村八分村八分BOXの4枚目
「見てる方はいいで見てる方は!」「だれかお水もってきてえ」等の名言飛び出す京大西部講堂でのライブ盤が初心者にはおすすめだが、個人的な村八分の名演はこれ。極限まで濃縮されたブルース/ロックンロール。

94 The Slits/Cut
ロックが圧倒的な男社会といえ、反面で女性アーティストによる戦闘的フェミニズムを生んだ系譜も見逃せない。オノ・ヨーコからレディ・ガガまで。素っ裸ジャケで元カレの名を叫ぶ(ジョーン・ライドン!)彼女らの勇姿に震えろ。

95 腐っていくテレパシーズ/テレパシーなんてうんざりだ
裸のラリーズはどれか1枚というよりその存在ごとカウントするとして、こっちは1枚しかないのだから逃れようもない。中島らもの著作に登場するカドくん、日本のシド・バレット、一級の臨床記録。……

96 銀杏BOYZ/光のなかに立っていてね
沈黙と混乱の長い歳月、素朴な初期衝動も信頼すべき仲間も失い、インダストリアルってかエレクトロニカを錐状に研いだノイズと原ヒップホップとしてのコラージュセンスが持ち前のポップなメロディーを通して流血合体。

97 King Crimson/The Court Of The Crimson King
高度な演奏技術、完璧に練られた曲展開、安い感傷とは無縁の文学的叙情性。衝撃の1stアルバムという惹句がこれほどふさわしい作品も他にない。涅槃を感じる。

98 APOGEE/Touch In Light
10年遅ければサカナクションになっていたかもしれない時代の徒花。近作はむしろ海外のインディーシーンと共振しすぎており、ハイブリッドに洗練されていながら土臭さの残る本作がベスト。今こそ再評価を!

99 Nerolies/STARBOOGIE
渋谷系界隈において驚異的なまでの知名度のなさ!だけどさ!これって奇跡でしょ?魔法でしょ?音楽でしょ?
ちなみに圧倒的知名度と引き換えにフリッパーズ・ギターの2ndと3rdを入れ忘れたけど大好きだよ!

100 尾崎豊/回帰線
中学生にして尾崎にハマった僕はライブビデオをすりきれるまで見てMC含め2時間分のライブをまるごと再現できるようになったが愛とまごころの敬虔な信者になった挙句現世においてはまるでモテない。今でも泣きながらシェリーを歌えるはず!